【難易度】☆
【手間】☆☆
【費用】☆
奈良時代から日本に根付いた仏教。現代を生きる我々にとっては無宗教の人が多くなり、関係がないと思う人が大多数かと思いますが、日本の歴史を振り返るに当たって、仏教について理解しておくことは、結構大切だったりします。
理由としては、例えば「偉人がこう言った」とか「ここに建造物を建てた」という場合の背景にあるのはその人の心情があります。その心情を理解するのに仏教の考え方を知らないと読み取りにくくなってしまいます。
そんな仏教の奥深い世界の入り口として、各仏像のジェスチャー(印相)について知っておくことは一つの道しるべになります。西洋絵画でも描かれる果物などにすべて意味があり、仏像でもそれは同様です。
いつか、「ポケットからキュンです!」から「ポケットから降魔印です!」などのえぐめの印相がはやることを夢見て紹介します。(降魔印の意味は後述)
本記事では、前提にある仏像の階層について説明し、特徴的な仏像のジェスチャー(印相)をご紹介し、簡単な使い方をお伝えします。
イチローがルーティーンを大事にしたり、五郎丸選手が五郎丸ポーズを取ったりする中、
何千年も継承され続けてきた印相を日々のルーティーンに紐づければ絶大な効果が発揮されるかも…!
前提:仏の階層とは
仏の位には階層があり、それぞれ大きく如来、菩薩、明王、天部と4つに分けられます。
如来
今日の目的地
— misaki11 (@misaki11ski) November 18, 2021
静岡県下田市の上原美術館は行くのは大変だけど、毎回濃ゆーい展覧会を開催されているので楽しみ
南禅寺の薬師如来さまはサスガの存在感でした#老後の弐仟萬圓も大事だけどホトケさまとの御縁も大事 pic.twitter.com/Nn495CkB54
手塚治虫のブッダの主人公や聖お兄さんの主人公でもある、ゴーダマシッダールタは釈迦如来と呼ばれ最上級の階級に属します。
名前に「如来」とつく仏像はメインに置かれる存在で、大日如来や阿弥陀如来など大仏にもなり、今回の仏像ジェスチャー(相印)の主なものはこの三体のものとなります。
有名な如来の特徴
大日如来と薬師如来と釈迦如来と阿弥陀如来がこの記事ではたくさん登場しますので、簡単にそれぞれの特徴について紹介します。
大日如来
・万物の母であり、全てであると同時に宇宙の真理大日とは「大いなる日輪」という意味です。太陽を司る毘盧舎那如来がさらに進化した仏です。密教では大日如来は宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指します。また、すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、釈迦如来も含めて他の仏は大日如来の化身と考えられています。 仏像ワールドより
薬師如来
・人々の病苦を救う
瑠璃光を以って衆生の病苦を救い給う如来で、その浄土は東方瑠璃光世界であると説く 奈良県薬剤師会HP より
釈迦如来
・ブッダこと、ゴーダマシッダールタ。実在した人物で、修行によって仏教の開祖となった。
釈迦如来は、インドの釈迦族の王子として実在しましたが、28歳で王位継承者の地位を捨て、 四苦(生・老・病・死)から解放される道をもとめ、各地の先覚や修行者を訪れ、6年にわたる 苦行を経てガヤー村の菩提樹の下て大悟を得て仏陀(覚者)となった仏教の始祖です。
高野山霊宝館HPより
阿弥陀如来
・法蔵菩薩と名乗っていたころの修行時代に、仏になったらすること48の誓いを立てられました。
見事仏になった阿弥陀如来様は、その48の誓いの中の一つ「十回念仏を唱えた人は必ず極楽浄土に導いてくれる」ので、それにすがり民衆は南無阿弥陀仏を唱えるようになったそうです。
阿弥陀様の恩恵を受け、死後に極楽世界にいけるように「あぁ阿弥陀様!」というすがる意味で「南無阿弥陀仏」と唱えるようです。
菩薩
如来になるために修行中、仏一歩手前なのが菩薩です。人々をすぐに救いにいけるよう立ち姿のものが多いとか。
広く知られているのは、「お地蔵様」で親しまれている地蔵菩薩で、町のふとしたところで見かけます。お地蔵様は、あそこに座りながら現生を生きる人々の苦しみを代わりに背負ってくれています。
明王
道隆寺降三世明王像:香川県所在。天平時代、このあたりは桑園であったといい、寺伝では、領主・和気道隆が乳母を誤って射殺してしまったため、これを悲しんで桑の大木を切って薬師如来を制作し、安置したのが起源であるという。五大明王の一角である。pic.twitter.com/GxOKC0nS4w
— 仏像紹介BOT (@butsuzobot) November 15, 2021
不動明王に代表されるように、武器を持ち怖い顔をしているのが多いです。
その訳は、明王は修行している人たちが煩悩に流されてしまうのを防ぐために厳しく律する存在だからで、真理の言葉(明)を見つけた最高位(王)から明王だとか。
後は、如来が人々の救済の際に明王に変身して諭されるとか。
天部
【京都・三十三間堂/迦楼羅王(二十八部衆)(鎌倉)】国宝。木造彩色、玉眼。163cm。天部八部衆のひとり。梵語でガルダ。巨大な翼をもつ金翅鳥で毒蛇を喰らう。鳥頭人身の仏神で横笛を持ち、尖ったくちばしに軽くあてて吹く姿をとる。 pic.twitter.com/EFBOsCUPOs
— 美しい日本の仏像 (@j_butsuzo) November 11, 2021
天界の神様たち。元々インドで信仰されていたバラモン教やヒンズー教の神様が仏教に帰依したものが多く、様々な神様がいます。
上記のように、階層が分かれております。結構表情とかも面白くて
如来まで行くと、目をつぶっていたりと無の表情をしていることが多く
菩薩は人々への慈愛を感じさせる優しい表情をしています。
明王は災いを退けるために迫力のある顔をしており、天部は笑ったりといろんな感情を持つものが多かったりするイメージです。
印相とは
印相とは、仏像が手で示すジェスチャーのことで仏像を理解する上で重要な意味を持ちます。
ここでは代表的な印相を挙げ、主に利用する仏像と、その意味や特徴について説明していきます。
阿弥陀定印
主に利用する仏:阿弥陀如来
やり方:両手のひらを上に向けて重ねます。親指同士が触れ合うように合わせ、両方の人差し指を立てて親指と輪をつくった形になります。
施無畏印、与願印
主に利用する仏:如来全般、奈良の大仏こと、東大寺の大仏は廬舎那仏こと、大日如来
やり方:施無畏印→手のひらを見せ、できれば親指は離します。だいたい右手です。
与願印 →手のひらを下げて相手に見せます。だいたい左手です。
意味: 施無畏印→畏れること無かれ →心配しなくていいよという意味
与願印 →願いをきくよ(叶えるよ)という意味 相手に施す仕草が元だとか
利用例:道端でインド系の人に「ちょっと道を聞いてもいいですか?」と聞かれた時
禅定印(定印)
https://t.co/8LHGfY4tyT :禅定印
— sacsac (@sacsackyoto) April 29, 2018
両手のひらを上に向けて重ねて、親指同士が触れ合う形。
釈迦が深い瞑想に入ったことを表すしぐさ。
座禅印(ざぜんいん)、法界定印(ほうかいじょういん)、定印(じょういん)ともいわれます。#クッキー型 pic.twitter.com/lS8k0av2bb
主に利用する仏:大日如来、釈迦如来、他色々
やり方:(どちらの手を下にするかで大論争が起きそうですが)左手の平を下にして、右手の平を重ねて、親指同士を触れ合うようにします。
意味:瞑想中です。
利用例:ドミノピザを頼むとき、ピザ生地をクリスピー系かパン系か悩んだ時
意味は、阿弥陀定印と同じです。ウルトラセブンだけがアイスラッガー(頭についてるモヒカンカッター)を使えるように、阿弥陀定印は阿弥陀様だけが利用可能なんでしょうか。
両方試してみて、私は阿弥陀定印の方がなんとなく体が瞑想モードに入った気がします。
智拳印
主に利用する仏:金剛界(煩悩を圧倒的に排することができた世界?)の大日如来のポーズ
やり方:胸の前で、左手をこぶしに握って人差し指だけ立て、それを右手で握るもの。(デジタル大辞典より)その際、左手は親指を残った指で包み、左手の人差し指の先と右手の親指を触れ合うようにします。右手は仏、左手は衆生を表します。(クッキーカッターミュージアム智拳印クッキーより)
意味:全ての真実を理解した(している)
利用例:お風呂に入った時、水の上昇した部分と自分の体積分が等しいので、これを利用すればどんな複雑な形の物でも体積を量れると気づいた時
説法印
【京都・広隆寺/阿弥陀如来坐像(平安初期)】胸の前で説法印(転法輪印)を結ぶ、珍しい作例。檜の巨木から彫り出し、両手は寄木。木心乾漆技法。二重円相の光背と裳懸座は一部に後補あり。両脇侍に地蔵菩薩、虚空蔵菩薩。堂内には入れない。 pic.twitter.com/F653kMu5NK
— 美しい日本の仏像 (@j_butsuzo) October 29, 2021
主に利用する仏:釈迦如来、阿弥陀如来
やり方:両手を胸の前に上げ、親指と人差し指を合わせて輪をつくります。如来が説法する時のしぐさを表現しています。(クッキーカッターミュージアム 説法印クッキーより)
意味:お話しますよ
利用例:「はーい、皆さんが静かになるまでに30分かかりました」と言う時。
降魔印
主に利用する仏:釈迦如来
釈迦如来が悟りを開いた時に、煩悩や魔に対して向けた仕草です。
手塚治虫のブッダだと「去れ、マーラよ!」って印象的なシーンでしたよね。
やり方:手の甲を見せ、人差し指を立てます。また、座りながら手の甲を見せて地面に触れている「触地印」というもの降魔印と同じ意味を持ちます。
意味:去れ、悪魔よ
利用例:怪しい営業電話が掛かってきたときのスマホに向けて
思惟印
弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしゆいぞう)。弥勒菩薩様と言えばこのポーズという個人的認識!
— 吉田恵里香 恋せぬふたり4話は31日後10:45~ (@yorikoko) April 22, 2019
広隆寺の仏像は国宝第1号だよ!切手にもなってるよ!すっ!#なむあみ #なむい #なむあみだ仏 pic.twitter.com/pOizh8Ymf6
主に利用する仏:弥勒菩薩
やり方:右手を頬ぐらいに持ってきて、薬指と親指を合わせます。
意味:瞑想に入ってます
利用例:カフェで「お水のお代わりはいかがでしょうか?」と聞かれないように考え込んでいるふりをするとき
弥勒菩薩はブッダ入滅後何億年後かに仏化することが決まっている菩薩様で、
それまで兜率天という弥勒菩薩様専用の浄土で仏化するのを待っているそうです。
仏化するタイミングで、お釈迦様によって救済されそびれた人々を救済するんだとか。
余談ですが、有名な弥勒菩薩半跏思惟像は、「弥勒菩薩が片足だけ組んで座って瞑想している像」という意味になります。
刀印
主に利用する仏:色んな悪魔去らせたい仏、明王、天部
やり方:右手の人差し指と中指を立てます。
意味:悪霊退散
利用例:夕方パチンコ屋の前で負けて換金屋にいかずぼんやりと虚ろな目をしている人たちの横を横切るとき
来迎印
主に利用する仏:阿弥陀如来
やり方:右手は上げて、左手は下げ、親指と人差し指を合わせて輪をつくります。
往生者を極楽浄土に迎えにくる阿弥陀如来の印。(クッキーカッターミュージアム 来迎印クッキーより)
意味:迎えにきたよ
利用例:反抗期の子供を車で迎えに行った時大声で呼ぶとキレるので、来迎印で静かに気づくのを待ちましょう。
九品来迎印
阿弥陀の九品来迎印 pic.twitter.com/JkB1m0rH45
— サンタ (@forzaoldbasterd) April 25, 2014
主に利用する仏:阿弥陀如来
やり方:上記のTwitterの表がけっこうわかりやすいです。仏様が極楽へ迎えに来るときに今までの人生をどう生きたかによって、しているジェスチャーが異なるようです。
上品は、先に説明した阿弥陀定印の立てる指が人差し指か、中指か、薬指かによってランクが変わります。
中品は、説法印の合わせる指が、人差し指か、中指か、薬指かによって変わり、
下品は、来迎印の合わせる指が人差し指か中指か、薬指に変わります。
また、合わせる指のランクは、
上生は人差し指、
中生は中指、
下生は薬指になります。
仏様の顔は全部無表情でも、合わせる指によって全く意味が異なるって怖いですね…。
大乗仏教経典の一つ『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』によると、阿弥陀仏の世界である西方極楽浄土に往生する人を生前に積んだ功徳の違いに応じて9種類に分類しており、これらを総称して「九品(くほん)」と言います。
その九品とは、
上品上生(じょうぼんじょうしょう)三心に象徴される深く往生を願う心を持ち、大乗方等経典を読誦する人。
上品中生(じょうぼんちゅうしょう)大乗方等経典を読誦しなくてもその意味をよく理解し、深く因果を信じ、大乗を誹謗しない人。
上品下生(じょうぼんげしょう) 因果を信じ、大乗を誹謗せず、ひたすらに悟りの道を求める人。
中品上生(ちゅうぼんじょうしょう)五戒・八戒を守り、五逆を行わない人。
中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)一日二十四時間、八戒もしくは沙弥戒(十戒)もしくは具足戒を守り、規律正しい行動が出来る人。
下品上生(げぼんじょうしょう) 大乗方等経典を誹謗しないが、悪業を働き、恥じ入ることのない人。
下品中生(げぼんちゅうしょう) 五戒・八戒および具足戒を犯し、寺院や僧侶のものを盗み、間違った説法をしても恥じ入ることのない人。
下品下生(げぼんげしょう)五逆・十悪、不善を行う人。
まとめ
以上、仏のジェスチャーについてご紹介してきました。
まだまだたくさんジェスチャー自体はあるのですが、入門編としては上記程わかっていると日常に使えるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました!。
主に参考にしたサイト
↑印相の説明がとにかく丁寧で勉強になりました。
この記事を読んだ方はぜひ、日本独自の即身仏についての記事もお読みください!
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